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名古屋高等裁判所 昭和52年(ラ)46号 決定 1977年5月10日

申立人

株式会社三幸倉庫

右代表者

鈴木武夫

右代理人

原山剛三

外一名

相手方

株式会社岐阜相互銀行

右代表者

宇佐見鐵雄

主文

原決定を取消す。

名古屋地方裁判所昭和五〇年(ケ)第一九三号不動産競売事件による別紙目録記載の不動産に対する競売手続は、右不動産についての滞納処分による差押が解除され又は右について競売手続続行決定があるまでこれを停止する。

本件申立及び抗告費用は全て相手方の負担とする。

理由

抗告代理人は、抗告の趣旨及び理由として、別紙即時抗告の申立と題する書面(写)記載のとおり主張した。

そこで本件申立の当否につき検討するに、本件記録並びに関連競売事件記録添付の登記簿謄本綴によると、

一(1)別紙物件目録記載の2から4まで、及び6から12までの物件については、名古屋法務局昭和五〇年五月一〇日受付第一六六六八号による名古屋市の差押登記、(2)1、5の物件には同法務局同日受付第一六六六九号による同市の差押登記、(3)同年八月八日同法務局受付第二八五八一号により2から4、同日受付第二八五八〇号により6から11までの物件には厚生省の参加差押登記、(4)同年一一月一八日同法務局受付第四一四三五号により2から4までの物件に名古屋市の参加差押登記がなされている。

二右物件につき、債権者貝沼正敬から右各差押に先立ち、昭和四九年二月一九日登記済の根抵当権の実行として、同年一一月五日名古屋地方裁判所に対し不動産競売申立がなされ、同日競売手続開始決定(同庁昭和五〇年(ケ)一五三号)がなされたところ、相手方においても昭和五〇年一一月二九日右物件につき根抵当権の実行として不動産競売の申立をなし、同日右事件に記録添付(同庁昭和五〇年(ケ)第一九三号)となつた。

三しかるところ、右一五三号事件における競売手続については、同裁判所において昭和五二年二月二一日、同庁昭和五一年(ラ)第六八九号執行方法に関する異議事件の裁判があるまでこれを停止する旨の決定がなされ該手続は停止されることとなつたが、前記記録添付のあることにより、一九三号事件(以下本件競売申立事件という。)として競売手続が続行された。

以上の諸事実を認めることができる。

叙上認定の諸事実によれば、相手方の申立にかかる本件競売申立事件は、前記一五三号事件に記録添付されたものであるから、該事件についての執行停止決定に伴い、これが新たな競売開始決定をうけたものとして差押の効力を生ずるのは、いうまでもなく、前記昭和五〇年一一月二九日以降であり、前記一五三号事件の差押の時に趨るものではない(このことと、相手方が記録添付の際の状態における競売手続をそのまま利用しうる地位に立つこととは別問題である。)。

してみると、本件競売の申立は、前記一五三号事件の競売申立後本件競売申立前になされた前記一・(1)乃至(4)掲記の各滞納処分による差押の存在により、滞納処分と強制執行等との手続の調整に関する法律一三条一項所定の要件が充足されるまで競売手続を停止することを余儀なくされるものというべく、したがつて本件(一九三号事件)につき手続を停止することなく前記一五三号事件の競売申立の効力を引継ぐものとして、入札および競落期日を公告するなどし、競売手続を続行することは許されないものといわねばならない。

よつて、本件抗告を理由あるものと認め、費用の負担につき民訴法四一四条、九六条、八九条を適用し、主文のとおり決定する。

(村上悦雄 上野精 春日民雄)

物件目録<省略>

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